4月28日投開票の衆院3補欠選挙は、自民党が3議席を失う結果となった。自民が唯一候補者を擁立した島根1区も、事前の予想通りだった。この結果に、メディアは9月の総裁選前の衆院解散は見送られると一斉に報じた。だが、島根で勝っていたとしても選挙に打って出るのは困難という状況は変わらない。
これまでも本欄で何度か指摘してきたが、岸田文雄首相が自ら退陣でもしない限り、首相(党総裁)を替える方法はない。引きずり下ろすとか総裁選で替えるとか息巻いている議員もいるが、どのような方法で誰に替えることができるのか聞いてみたいものだ。党と内閣の支持率が低迷を続ける原因は、政治資金パーティー裏金事件や旧統一教会問題。岸田首相の立場からすると、自身が直接関与していない不祥事で支持率が低迷するのはむしろ迷惑だと思っていることだろう。現時点で9月の総裁選に出馬しないという考えはないはずだ。
自民党には裏金問題とともに、政党から議員に支出される「政策活動費」の問題も重くのしかかっている。立憲民主党の議員は、5年間で50億円ということならば計算上「時速10万円」(単純計算で1時間に10万円が消費されているという意味)が何に使われているか明かさないのは大問題と指摘する。岸田首相は「政治活動の自由にかかわる」として明らかにしようとしないが、内密にしなければならない政治活動は買収以外に思いつかない。
今回の3補選でも「自民党とカネ」の問題が争点となった。しかし各候補者は批判するばかりで、自身が国政の場で何をしたいのかは伝わってこなかった。かつて流行した「マニフェスト」はどこに行ったのか。自民党も謝罪や反省の弁は述べるが、どう制度を変えてどうけじめをつけるのか明確にしていない。
今回の補選では自民が3減、立民が3増となった。衆院の任期はまだ1年余りある。この間に与野党がどう対処するのか。最後は国民が選挙で審判するしかない。(政治評論家)