不動の4番は足でも勝利に貢献する。走塁の意識改革を図るDeNAにあって、4年目の牧秀悟内野手(26)が機動力を発揮している。4月時点で自己最多の4盗塁。一度も失敗していない。「意外と走れるんだなと思ってもらえたらうれしいですね」と誇らしげに笑う。
通算358盗塁を誇る石井チーフ打撃兼走塁兼一塁ベースコーチの指導の下、春季キャンプから徹底的に鍛えてきた。試合前練習では左右の投手役を務める石井コーチ相手に、一塁走者を想定して繰り返しスタートを切る。地道な反復練習が成果に表れつつある。
「必要なのは準備と勇気だと思う。足が速くなくても盗塁はできます」
勝利に結びついた好走があった。2―1で競り勝った4月5日の巨人戦(東京ドーム)。同点の七回先頭で右前打を放ち、次打者の6球目に二盗を決めた。カウント2-2からフォークボールで打者を打ち取ろうとした相手バッテリーの意表を突き、鋭い出足でスピードに乗ってヘッドスライディングで二塁へ。好機を演出し、勝ち越しのホームを踏んだ。
走塁の強化を担当する新任の佐竹アナリストの助言を基に、相手投手の癖や特徴を頭にたたき込む。「相手のことを分かった上で、いい準備ができている。ベンチから『行けたら行け』『失敗したら仕方ない』といわれていて、思い切って走れています」。公称178センチ、97キロ。1年目から3年連続で20本塁打以上を誇るまごうことなきスラッガーだが、確かな走力がある。
走塁はチームの積年の課題。とりわけ昨季の盗塁33個はリーグ最少、成功率・559(59企図)はリーグワーストだった。今季はオープン戦で12球団最多の24盗塁を決めたが、真価が問われるのはマークが厳しくなるここからだ。
主将の牧は「選手全員が相手の投手に対して集中できている。そこは去年と違うところなんじゃないか。走塁の意識は全員についている」とうなずく。力強い打棒はもちろん、果敢に仕掛ける足も見逃せない。(鈴木智紘)